動画タイトル
50歳以下の早発性・若年性大腸がんの原因物質が特定か(Natureスタディ) – Why More Young People Are Getting Colon Cancer
ざっくり言うとこういう事です。
大腸内の細菌が産生するコリバクチン(colibactin)という毒素に由来する変異シグネチャー(SBS88とID18)(DNAに残る「変異の指紋」、原因を推定できる。)が、40歳未満の患者では70歳以上の患者の3.3倍多く検出された。
早発大腸がんの増加の一因として、若年期にコリバクチン産生菌に曝露されることが関与している可能性が高い。
(ざっくりし過ぎてすみません汗)

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Full Story
Cited study: Geographic and age variations in mutational processes in colorectal cancer Published: 23 April 2025, nature. https://www.nature.com/articles/s41586-025-09025-8
論文のポイント
- 研究対象: 11カ国(日本、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、タイ、イランなど)から集めた981例の大腸がんゲノムを解析。
- 背景:
- 大腸がんの発症率は地域によって異なる。
- 特に過去20年で「50歳未満での大腸がん(早発大腸がん)」が倍増している。
- その理由は明らかになっていない。
- 主要な発見:
- マイクロサテライト不安定型(MSI)のがんでは大きな地理的・年齢的差は見られなかった。
- マイクロサテライト安定型(MSS)のがんでは、変異の種類や頻度に大きな国ごとの違いがあった。
- 特に注目されたのは、大腸内の細菌(大腸菌など)が産生するコリバクチン(colibactin)という毒素に由来する変異シグネチャー(SBS88とID18)。
- これらは大腸がん発症率の高い国でより多く見られた。
- また、40歳未満の患者では70歳以上の患者の3.3倍多く検出された。
- コリバクチン関連変異はがん発生の初期から刻まれており、特に**APC遺伝子(大腸がんの重要なドライバー遺伝子)変異の約25%**がコリバクチン由来と推定された。
- 結論:
- 早発大腸がんの増加の一因として、若年期にコリバクチン産生菌に曝露されることが関与している可能性が高い。
- 環境要因(生活習慣や微生物叢の違い)が地理的な発症率の差を説明するかもしれない。
専門用語解説:
🔹 マイクロサテライト安定型(MSS, Microsatellite Stable)
- マイクロサテライトとは、DNAの中にある短い繰り返し配列(例: “CACACACACA…”)のことです。
- DNAを複製するときに、この繰り返し部分は間違いやすいのですが、通常は「DNA修復システム」が直してくれます。
- **安定型(MSS)**は、この修復がきちんと働いていて、マイクロサテライト配列に異常が起きにくいがんのタイプ。
- 多くの大腸がんはこのタイプに分類されます。
🔹 マイクロサテライト不安定型(MSI, Microsatellite Instability)
- 上の「DNA修復システム」が壊れてしまっている場合。
- その結果、マイクロサテライト配列にエラー(挿入や欠失)がどんどん溜まる。
- **Lynch症候群(遺伝性大腸がん)**に多いタイプ。
- この研究ではMSI型は国や年齢による差があまり見られなかったと報告されています。
🔹 コリバクチン(Colibactin)という毒素
- 一部の大腸菌(E. coli)など腸内細菌がつくる 化学物質(毒素)。
- DNAを傷つける作用があり、その痕跡が「変異シグネチャー」としてゲノムに残る。
- 子どもの頃に腸内にこの細菌が多いと、DNAに早くから変異が刻まれて、のちのち大腸がんのリスクを高めると考えられています。
🔹 変異シグネチャー(Mutational Signature)
- がん細胞のDNAを調べると、どういう種類の突然変異がどんなパターンで起きているかがわかります。
- たとえば「CがTに置き換わる変異が特に多い」とか「小さなDNA欠失が目立つ」など。
- このパターンを **「シグネチャー」**と呼び、それぞれが特定の原因(喫煙、紫外線、コリバクチンなど)と結びつくことがあります。
- つまり、**DNAの“変異の指紋”**のようなものです。
🔹 APC遺伝子変異
- APC遺伝子は「がん抑制遺伝子」の一つで、大腸がんの発生において非常に重要。
- APCは細胞の増殖をコントロールする役割を持つのですが、壊れると「増殖のブレーキ」が外れ、腫瘍ができやすくなる。
- 大腸がんの初期段階でしばしば変異が入ることが知られています。
- この研究では、コリバクチンによるDNA損傷がAPC変異を引き起こしうることが示唆されました。
🔹 ドライバー遺伝子(Driver Gene)
- がんになる過程で起こる遺伝子変異には2種類あります:
- ドライバー変異:がん細胞の成長・生存に直接寄与する変異(例: APC, KRAS, TP53)。
- パッセンジャー変異:偶然起きただけでがんの成長には関与しない変異。
- ドライバー遺伝子とは、この「がん化を推し進める重要な遺伝子」のことです。
👉まとめると:
- MSS/MSI=DNA修復の働きによって安定/不安定かを示す分類。
- コリバクチン=腸内細菌が作るDNAを壊す毒素。
- 変異シグネチャー=DNAに残る「変異の指紋」、原因を推定できる。
- APC遺伝子=大腸がんの初期に壊れる「ブレーキ遺伝子」。
- ドライバー遺伝子=がんを進めるエンジンのような遺伝子。
大腸菌が体内に取り込まれる経路
- 食べ物や水を介して
- 大腸菌はヒトや動物の腸に常在していて、糞便で外に出ます。
- 衛生管理が不十分だと食品や水が汚染され、それを口にすることで体内に入る。
- 人や動物との接触
- 手指や調理器具を介して感染することもあります。
- ペットや家畜由来の株がヒトに入ることも。
- 母子間伝播(出生時や乳児期)
- 赤ちゃんは生まれたときはほぼ無菌状態で、
出産時に母親の産道や便に含まれる菌から大腸菌が定着することがあります。 - その後も授乳や環境を通じて菌が入ってきます。
- 赤ちゃんは生まれたときはほぼ無菌状態で、
🔹 コリバクチン産生株(pks+大腸菌)の特徴
- 大腸菌は何百種類もの「株」があり、すべてがコリバクチンを作るわけではありません。
- pksアイランドという遺伝子セットを持つ菌だけがコリバクチンを作れます。
- 健常人の腸内細菌叢にも一定の割合で存在することが報告されています。
🔹 ハイリスクな行為・状況
科学的に確定的ではありませんが、以下の行動や環境がリスクを高める可能性があります。
- 不十分な衛生管理の食事
- 生肉や加熱不十分な肉、未殺菌の乳製品、生野菜の汚染。
- 水道水が十分に殺菌されていない地域では飲水。
- 抗生物質の乱用
- 腸内細菌叢のバランスが崩れると、病原性大腸菌やpks+株が増えやすくなる。
- 幼少期の環境
- 論文でも示されているように「子どものころにコリバクチンに曝露される」ことが、後年の大腸がんリスクに関係する可能性がある。
- 幼少期に腸内環境が未成熟であるため、特定の株が定着しやすい。
- 慢性的な腸炎や腸内環境の乱れ
- 炎症や食生活の乱れ(高脂肪・低繊維食)で腸内環境が悪化すると、pks+大腸菌が優位になることが報告されている。
🔹 まとめ
- 入り口は主に食べ物・水・接触。
- リスクを高める要因は、
- 不衛生な食品・水の摂取
- 抗生物質の乱用による腸内細菌叢の乱れ
- 幼少期の腸内環境の影響
- 慢性的な腸炎や生活習慣
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