対話型AI、AI翻訳、AI英文校正等が広く使われる時代。便利なツールで文章は整いますが、「読者に伝わる、通る英語論文」を書くには、研究者自身が文の骨組みや論理構築の土台を理解し、自分の言葉で文章を組み立てる力が不可欠です。本記事では、AIを活かしつつアカデミックライティングのスキルを磨くための英文法の基本を整理します。
AIを賢く使う・最後は人間が決める
AI英文校正やChatGPT等対話型生成AIは、文法の誤りのチェックや語彙選びを瞬時に行ってくれ、忙しい研究者の効率アップに一役買っています。
しかし、多くの研究者が直面するのは「読みやすいのに、なぜか相手に伝わらない、通らない英文」です。
その原因は、AIが整えるのは表層までで、文章オーナーが適切に指示しない限り、論理展開や補足、情報の階層構造までは判断できないことにあります。勿論、背景が分からないので行間を読んではくれません。
英文法の理解は、AIを正しく使いこなすための前提条件です。
AIを万能と錯覚せずに、論理ストーリー構築力と英文力を磨き続けることで、研究者のスキルセットに差を付けることがいつの時代も大切です。
漢字文化に根付く「名詞+名詞」の羅列を避け、修飾語句・動詞・節を自在に操るコツを、論文指導の現場から解説します。

Viva 人間!万歳 人間!
(心に響くココペリ名言集より)
AIを超える英文法ガイド ー完全ロードマップー
目次:
英語は「動詞派生言語」、日本語は「名詞派生言語」
―日本人の英語が伝わらないのはこれを理解していないから―
💡動詞編
英語論文で最も重要なのは動詞です。動詞の理解なしに、正確で論理的に簡潔明瞭な文章は組み立てられません。
- 英語は動詞を語源とする言語
- 「接頭語+動詞+接尾語」が基本
例)
inject+ion →「動詞+名詞の接尾語」
develop+ment →「動詞+名詞の接尾語」
re+admit →「接頭語+動詞」
- 日本語は漢字二文字の名詞を語源とする言語
- 「名詞+する」複合動詞
例)
「注射+する」
「退院+する」
📌日本語でやっている習慣「名詞+名詞+名詞」(術後+予後+不良)の羅列はダメ!
✍️自動詞・他動詞
英語の動詞には自動詞と他動詞があります。
- 自動詞:目的語を取らず、動作や状態を表す。
- 他動詞:目的語を取る。
- 自動詞・他動詞 両方になれる動詞:同じ単語だが「用法」が異なる。
自動詞の例:🔥英語論文頻出🔥
- (the number of patients continues to) rise (数量が)上がる、上昇する
- (temperature) soar(数値が)急上昇する
- (blood pressure) drop (程度が)下がる、低下する
- (conditions) deteriorate (病状が)悪化する
他動詞の例:🔥英語論文頻出🔥
- reduce (A by B%) (AをB%)減らす、下げる
- minimize (discomfort) (不快感を)軽減する
- alleviate/mitigate (pain) (痛みを)緩和する
- heighten (breast cancer risk) (乳がんのリスクを)高める
自動詞・他動詞 両方ある例:
- increase🔥英語論文頻出🔥
- 自) 増加・増幅する
- 他) 増加・増殖させる
- decrease🔥英語論文頻出🔥
- 自)減少・低下する
- 他)減少・低下させる
- worsen (a condition)
- 自)(様態が)悪化する
- 他)(病状を)悪化させる
📌いずれも科学論文で頻出する動詞です。用法を正しく理解しましょう。
✍️能動態・受動態
動詞の形を変えることで、文章の焦点を変えられます。
- 能動態:S + V + O1 + O2
例)We administered the patient intravenous fluids. →医師に焦点
患者に静脈内輸液を投与した。
S(~が)+ V(~する)+ O1(~に)+ O2(~を)の文
- 受動態:S + V(be + 過去分詞) + O2
例)The patient was administered intravenous fluids. →患者に焦点
S(~は)+ V(be+過去分詞:~される)+ O2(~を)の文
📌論文では受動態が一般的で、主語「We」を省略できます。
✍️使役動詞
他人に動作をさせる構文で、文章を簡潔にします。
例)have, make, let, get など
📌正確な使役動詞の理解は、英語論文での明瞭な表現に直結します。

”動詞の時制”を制覇する者は”英語を制覇”する。
(心に響くココペリ名言集より)
「修飾語」の理解は必須
💡修飾語編
英語論文で意味を正確に伝えるには、修飾語の理解が不可欠です。形容詞・副詞・前置詞句などの修飾語・句・節を正しく使えることで、論理的で読みやすい文章になります。
✍️基本編
🔍形容詞は名詞を修飾する
- 「修飾語なし」+ 名詞
例)cancer がん
- 形容詞+名詞
例)metastatic cancer 転移(性)がん
📌日本語の「〇〇性、〇〇的、〇〇の」は形容詞、「名詞+名詞」はNG
📌「名詞→形容詞の変換」 -ic, -al 等をマスターしましょう。🔥英語論文頻出🔥
🔍ダメな例
日本人の書く文章は漢字文化から「名詞+名詞+名詞」の羅列が多いです。
伝わらないことはないですが、文法的には誤り、奇異に映ります。
例)X patient admittance 患者・入院「名詞+名詞」
X administration medications 投与・薬剤「名詞+名詞」
📌-ent, ance, -tion, ationはみな名詞の終わり方です
📌「名詞+名詞」は”慣用句(例、vaccine hesitancyワクチン忌避)”以外は避ける
- 仕方ないケース(文法的には「副詞+形容詞+名詞」が基本)
例)a single-locus autosomal dominant trait「形容詞+形容詞+形容詞+名詞」
単一遺伝子 常染色体 優勢 特質
🔍副詞は動詞を修飾する
例)successfully removed「副詞+動詞」
「形容詞+ly」は副詞
📌日本語では「切除に成功」と言うが、「成功裏に切除した」の方が自然な英語(動詞中心!)🔥英語論文頻出🔥
🔍副詞は形容詞を修飾する
例)extremely rare 非常に まれ「副詞+形容詞」
very well とても 上手に「副詞+形容詞」
「前置修飾」 vs 「後置修飾」を制覇せよ
✍️応用編
🔍前置修飾 vs 後置修飾
英語では修飾語の位置が意味の明瞭さに直結します。
✅前置修飾:名詞の前に置く
形容詞は通常、名詞の前
例)an elderly patient → 高齢患者
📌 an “old” patient → 和製英語、論文ではNG
✅後置修飾:名詞の後ろに置く🔥英語論文頻出🔥
英語論文では、前置(形容詞)・後置(前置詞句・to不定詞・関係代名詞節)を駆使して名詞を詳しく説明します。一つの文が3行に及ぶことも珍しくありません。
📌ゴールデンルールは「2語以上の修飾語は名詞の後ろに置く」
前置詞句🔥英語論文頻出🔥
例)a patient on dialysis 透析患者(後ろから前の名詞にかかる)
関係代名詞節(形容詞節)🔥英語論文頻出🔥
例)a patient who received a XX therapy (後ろから先行詞にかかる)
XX 治療を受けた患者
to不定詞の「形容詞的」用法
例)a specialist to consult 相談すべき専門家(後ろから前の名詞にかかる)
📌to不定詞には「名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法(中2英語)」があり名詞を修飾出来るのは「形容詞的用法」だけです。
✅前置・後置 ”両方” 🔥英語論文頻出🔥
例)postmenopausal women with osteoporosis 「形容詞+名詞+前置詞句」
閉経後 骨粗しょう症 (女性)患者
📌🔥英語論文頻出🔥心してかかるべし。

「受験英語」は決して無駄にはならない。
(心に響くココペリ名言集より)
みんな大嫌い”関係代名詞”再登場
💡関係代名詞の省略ルール編 🔥英語論文頻出🔥
✍️「主格(S)の関係代名詞+一般動詞(V)」🔥英語論文頻出🔥
→ 関係代名詞を省略して動詞をing形にする
例)a patient who received a XX therapy → a patient who receiving a XX therapy(後ろから先行詞にかかる)
✍️「関係代名詞(S)+Be動詞(V)」🔥英語論文頻出🔥
→ 関係代名詞とbe動詞は”まとめて”省略可能
例)a patient (who was) given a XX treatment → a patient given a XX treatment(後ろから先行詞にかかる)
📌高校英語で学習した「分詞構文」は関係代名詞節の一省略ルールです。

「受験英語」は決して無駄にはならない。
(心に響くココペリ名言集より)
「名詞節・形容詞節・副詞節」を理解すれば
―ワンランク上の英語論文が書ける―
―スラスラ英語論文が読める―
💡従属節編 🔥英語論文頻出🔥
✍️名詞節
※代表例が「that節」 ”~であること”
that A is associated with B
「AとBに関連性があるということ→AとBの関連性」
📌名詞節は名詞や動名詞のように「主語S・(動詞や前置詞の)動詞の目的語O・(Be動詞の)補語C」になれる
The study indicates that A is associated with B.
✍️形容詞節
※代表例が「関係代名詞節 who/which/that(論文では使わない)」
who received a XX treatment
「XX治療を受けた・・・(先行詞にかかる)」
📌形容詞節は直前の名詞「先行詞」を後ろから修飾する
✍️副詞節
※代表例が「条件・仮定 if節」「原因・理由 because/since/as節」「時 when/while/before/after節」「比較・対照 although節」
because there is no known cure for the disease
「その疾患には治療法がないので・・・(主節に導かれる)」
📌副詞節は「主節」を修飾する

英語はロシア人形のように、小さな”sv(節)”が大きな”SV(文)”の中に入っている。
(心に響くココペリ名言集より)
英語の階層を意識せよ
💡英語の階層編
英語論文では、文字や単語から文章全体まで、階層的に理解すると論理構造を把握しやすくなります。
- letter(アルファベット・文字)
- 例:a, b, c …
- word(単語)
- 例:patient, doctor, room, X-ray
- phrase(句・フレーズ・熟語・慣用句)
- 例:get vaccinated, on dialysis, doctor in charge
- clause(節)🔥英語論文頻出🔥
- 主語と動詞を含む文の一部で、独立した文ではない場合「従属節」と呼ぶ
例:who received XX treatment
- 主語と動詞を含む文の一部で、独立した文ではない場合「従属節」と呼ぶ
- sentence(文)
- 大文字で始まり、ピリオドで終わる完全な文
例:Some patients who received XX treatment died in weeks.
- 大文字で始まり、ピリオドで終わる完全な文
- paragraph(段落・パラグラフ)🔥英語論文頻出🔥
- 複数の文でひとつのトピック
- トピックが変わったら改行して新しい段落
- article(記事・論文・文章)
- book / journal(本・雑誌)
📌階層を意識すると、文章構造が見え、論文読解・執筆が格段にスムーズになります。
💡Word Family編 🔥英語論文頻出🔥
英単語は、動詞・名詞・形容詞・副詞の派生関係を理解すると、語彙力が指数関数的に増えます。
例:develop(動詞) 🔥英語論文頻出🔥
- development(名詞)
- developmental(形容詞)
例:inject(動詞)
- injection(名詞)
- injectable(形容詞)
📌Word Familyを意識するだけで、知らない単語も文脈から意味推測が可能になり、論文執筆時の語彙選択が格段に速くなります。
※注意:英語では例外は常に必ずある。

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