博士論文、国際ジャーナル投稿のための先行研究・文献レビューをしていると、「どうしてもここだけは本人に聞いてみないとわからない」という箇所に出くわすことがあります。
けれども、海外の著名な研究者に直接メールを送るのは、正直こわい。
「私なんかが送っても、読まれもしないのでは……」
「レベルの低いくだらない質問と気分を害すかもしれない……」
「そんなつもりはなくても研究ノウハウを盗もうとするフリーライダーと思われるかもしれない……」
そう思って、メールを書く前から諦めてしまう——多くの学生がそうだと思います。
でも、それではいけません。
「ダメ元」上等、当たって砕けろ。人生は自分で切り開け。
返事が来るかどうかではなく、**「思わず返事をしたくなるようなレターを書く」**ことが大事なのです。
その努力を惜しまない人こそが、最終的に扉を開けます。

「ダメ元」上等、当たって砕けろ。人生は自分で切り開け。
(心に響くココペリ名言集より)
学生のオリジナルレター(日本語版)
学生が最初に書いてきた日本語の原稿は、悪くありませんでした。
しかし残念ながら、英語圏の教授が読むことを想定していない構成でした。
主な問題点は次の通りです。
- 用件が最後までスクロールしないとわからない
- 自己紹介が「大学院修士課程2年・神経心理学専攻」程度で、人となりが見えない
- 論文を深く読み込んで著者のメッセージをどう受け取ったかの洞察がない
- 質問がアバウト過ぎる、質問の意図が不明確
- なぜその質問をするのか、相手にとってのメリットが伝わらない
つまり、「わざわざ忙しい時間を割いて返信しよう」という気持ちが起こらないのです。
結論は先に、心は丁寧に。
日本語の手紙文化では、時候の挨拶から入り、用件は最後に述べるのが礼儀です。
しかし、英語圏では**「結論先・説明あと」**が原則。
さらに、メールである以上、件名と冒頭2〜3行で「読む価値があるか」が判断されるという現実があります。
メールアプリのプレビューで用件が見えなければ、100件以上のメールを受け取るような教授の目には留まりません。
——これは、私が以前コンサルタントをしていた頃に痛感したことでもあります。
忙しい人ほど、件名と冒頭3行しか読まないのです。
ChatGPTでリライトしたバージョン(英語)
そこで、ChatGPTに以下の条件を与えて書き直してみました。
- 相手は北米の大学教授
- メール件名は用件が明確で誠実に見えるもの
- 結論先、トーンは丁寧かつ簡潔
- 「質問の背景」「自分がここまで調べたこと」「なぜこの教授に訊ねたいか」を含める
結果、こうなりました。
Subject: Inquiry about experimental design in your paper The Architecture of Memory: Pathways of Thought
Dear Dr. Whitman,
My name is Aki Tanaka, a second-year master’s student in cognitive neuroscience at Eastfield University. I’m currently conducting a thesis project on associative memory retrieval, and your paper The Architecture of Memory has been a central reference in my research.
After carefully reading your section on the “context reinstatement paradigm,” I’m trying to understand how the spatial cues were balanced across trials. I’ve reviewed related studies and checked supplementary materials, but couldn’t find the exact procedure used to minimize confounding effects.
If possible, could you please clarify whether the spatial cues were randomized within subjects or across blocks? I would like to ensure methodological consistency with your design.
I deeply appreciate your time and understand how busy your schedule must be. Even a brief clarification or reference to any public dataset would be enormously helpful.
Thank you very much for your attention.
Warm regards,
Aki Tanaka
「質問は具体的に!」
これは、教授たちが口を揃えて言うことです。
「読めばわかることを訊かないでほしい」
「そもそも読む前に訊いてくる学生が多すぎる」
教授の多くは、毎日山のようなメールを受け取っています。
そこに「質問という名の手抜き」や「〇〇教授から返事が来た!というミーハーな目的の問い合わせ」が混じると、当然ながらうんざりしてしまいます。
だからこそ、質問は具体的に。
自分でできる限り調べたうえで、
「ここまでは理解できたが、この一点だけ確認したい」という姿勢を見せること。
それが、誠意です。
教授側の気持ちを想像する
このメールを受け取った教授の立場で考えてみましょう。
- 件名からすぐに「どの論文・どんな質問か」がわかる
- 「自分の研究をよく読んでくれている」と感じる
- 「質問が具体的で、答えれば役に立つ」
- 「研究者としての誠意が感じられる」
つまり、「この学生には答えてあげよう」という心理的ハードルがぐっと下がるのです。
それは、内容の巧拙以前に、「相手への敬意」と「自分の誠実な努力」が伝わるからです。
ジャーナル投稿も、ある意味ではSNS投稿と似ています。
投稿しても「いいね!」どころか誰にも読まれない——そんな寂しさを味わった研究者は少なくありません。
だからこそ、自分の論文を読んでくれた誰かが、感想や質問をメールで送ってくれたら、それは何より嬉しいことなのです。
これは就活のエントリーシートにも通じる
実は、この“伝える力”は、大学生の就職活動にも共通します。
何百通と出しても書類選考で落ちる人、
たった数件で内定がいくつも出る人——この違いは明確です。
それは、相手がどう感じるかを想像して書けているかどうか。
そして、相手の視点に立って文章を組み立てられるかどうか。
メールもエントリーシートも、「自分が伝えたいこと」より「相手にどう伝わるか」が問われているのです。
ChatGPTをうまく使うには
ChatGPTは、単に英文を整えるツールではありません。
「どんな印象を与えたいか」「どんな人間関係を築きたいか」まで考えて、
トーンを調整してもらうことができます。
今回のケースでは、
- まず学生の日本語原稿をChatGPTに渡して自然な英文にしてもらい、
- その後、英語圏教授に送るメールとして**「最も自然で好印象なトーン」**になるよう添削してもらいました。
その結果、形式的でも、馴れ馴れしくもない、**“ちょうどいい距離感のメール”**が完成したのです。
おわりに
研究の世界では、知識だけでなく「伝え方」も大切です。
どんなに優れた質問でも、伝わらなければ存在しないのと同じ。
だからこそ、AIを賢く使いながら、
「相手が思わず返事をしたくなる」言葉の力を磨いていくことは、
若い研究者にとって、最高のコミュニケーション・トレーニングになります。
(※登場する大学名・教授名・論文タイトルはすべて架空のものです)
ChatGPT入力用プロンプト
使い方
👇以下をChatGPTにコピペして使ってください。ChatGPTがきれいに出力します。
🎯最下部の【入力情報欄】だけあなたの内容に差し替えてください。
💡送信する前に必ず内容を精査(英語⇔日本語を突き合わせ)して誤りがないか確認してください。
以下の条件で、最下部の【入力情報欄】をもとに、教授が思わず返信したくなるような心を打つ「国際的な研究問い合わせ英文メール」を作成してください。
宛先:英語話者の欧米の大学教授
差出人:日本語話者の日本人研究者
メールの目的:教授の論文に関して具体的な研究質問を行い、誠実で知的な印象を与えること
英文トーン:教授宛ての正式な依頼文として、学術的で自然・丁寧・知的・洗練された印象。フォーマルでありつつ、冷たくならず礼儀正しく誠実。
出力の後半に日本語訳を併記してください。日本語訳は自然で意味がわかりやすい文体にしてください。
メール作成ルール:
- Subject(件名)は、どの論文に関する問い合わせかが一目でわかるようにする。
- 忙しい相手を想定し、メール冒頭2〜3行で用件が明確に伝わるようにする(メールプレビューに入る範囲)。
- 長すぎず(200〜300語目安)、読みやすい自然な英文で。
内容の必須要素:
- Subject: Inquiry about [論文タイトル]
- 自己紹介:所属・研究分野・現在の研究テーマ・研究ゴールや意義
- 相手論文への言及:どの部分が特に有用・印象的だったか
- 質問内容:できる限り具体的に(自分で調べたがここだけ不明、等)
- 質問の意義:なぜその情報が必要か・自身の研究にどう関係するか
- 結び:感謝の表現、礼儀正しいクロージング
出力形式(この形式で出してください):
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Email:
[英語メール本文]
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日本語訳:
[対応する日本語訳]
———
【入力情報欄】
自分の氏名:〇〇
所属・身分:〇〇大学大学院〇〇専攻 修士/博士課程〇年
研究トピック:〇〇
研究ゴール/意義:〇〇
問い合わせ先教授:〇〇(大学名)
論文タイトル:〇〇(発表年)
論文掲載ジャーナル:〇〇
特に有用だと思った部分:〇〇
質問内容:〇〇
その情報が必要な理由:〇〇
💡ヒント:
「自分で調べたが、該当の手法が明確に示されていないため質問したい」など、努力の跡を書くと印象が良くなります。
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