ジャーナル投稿アクセプトの為の”プロにちょっと近づく”画像制作・編集テクニック①初級編(Elsevier「GUIDE FOR AUTHORS」準拠)

研究計画を作成し、地道な研究室での実験、臨床現場での実践研究、大規模実証実験等々を重ね、適宜”怖い/優しい/気分屋”教官の指導も受け、統計処理も行い、論文原稿を執筆し(英語は最悪翻訳に出すとしても)、後は提出するだけ・・・・・って思ってませんか?

貴方それ間違ってますよ。

・・・それは卒論、修士や博士論文のケースです!! 

「ジャーナル投稿」の場合はパブリッシヤー毎、ジャーナル毎に独自の運営方針があり、パブリッシヤーやジャーナルの「投稿ガイドライン」に則って提出しないとそもそも受け付けても貰えません!!

そしてよくよく認識して頂きたいのは、当たり前のことですが、大学院は教育研究機関であり、パブリッシヤーは「営利団体」であるということ。

修士論文や博士論文は学位を取得するためのもの。

「ジャーナル投稿」は「貴方の研究を広く世に知らしめるための広告宣伝ツールである」ということ。

頭の切り替えが必要です。

「投稿ガイドライン」に則った

Photoshopを使った

基本の画像制作・編集テクニック

ということで、このブログ投稿では2,500誌以上の科学・技術・医学・社会科学分野のジャーナルを発行するエルゼビアの「投稿ガイドライン」、特に「Electronic artwork」のパートを参考に「基本の画像制作、編集、投稿のヒント」を解説していきます。

尚、「投稿ガイドライン」は予告なくアップデートされることがあり、またパブリッシヤーやジャーナル毎にガイドラインは異なります必ずご自分が投稿なさるジャーナルのサイトから最新情報を入手して「必ずご本人の責任に於いて」投稿してください。本ブログ内容に起因して「投稿を受け付けて貰えなかった」「リジェクトされた」「論文が撤回された」等々、当方は一切の責任を負いません。

必要なもの

  • Adobe Photoshop 無料ダウンロード先はこちら 
  • 素材(オリジナルJPEG画像、埋め込みPNG画像「赤矢印(フリー素材)等」)
  • ワークし易いよう、デスクトップ上にフォルダを作ってまとめておく
  • ワードやパワーポイント程度のビジネススキル
  • 「アクセプトを絶対勝ち取る」という不屈の精神

初級

まずはこれだけクリアしましょう

初級を終えるとこれだけ出来るようになります:

  1. 「画素数」を300ppiに修正「keep to a minimum of 300 dpi」
  2. 受け付けるファイル形式はジャーナルにより異なりますので必ず確認。ここでは「.TIF形式」(編集可能/editable)で「別名保存」、ファイル名をわかりやすく「Figure1,2,….(画像内に入れない場合)」
  3. Figure内に複数画像を並べる場合、画像サブ番号(a,b,….)を「文字挿入」
  4. 埋め込みPng画像「赤矢印」を挿入、大きさ/向き/角度を整える
  5. 背景黒or透明画像を新規作成
  6. キャンバス上にフレームツールを使って「画像を入れるフレーム」を並べて揃える、枠線の太さを変える
  7. ドラッグドロップで事前に用意した(1~4で作成した)画像(300ppi/tif形式)を6で作成したフレームに投げ入れる
  8. フレームの縦横・線、中の画像の縦横・位置を微調整
  9. 白黒レイヤーを作成、「カラー⇔白黒」を使い分ける
  10. 最後に切り抜きしてTIF形式で保存

Photoshopの基礎知識

Photoshopを立ち上げてオリジナル画像を開いた画面

①最上部横方向「メニューバー」

③左縦方向「ツールバー」

初級で使うもの:

切り取り
文字入力
フレームツール
ズームイン・アウト

②上部横方向 ツールバー毎の「オプション」設定項目(メニューバー下の「家マーク」の右並び)

例)文字入力⇒フォント、サイズ

右側「ウィンドウ」(細かな設定を行う領域、メニューバー/ウィンドウから選択)

良く使うので出しておくもの:

④プロパティ(縦横サイズ、画素数、線)
⑤レイヤー(何層にも重なる透明フィルムのようなもの)

作業開始

1. 「画素数」を300ppiに修正

右ウィンドウ内表示

「カンバス」縦横/画素数

「レイヤー」取り込んだ画像一枚

取り込んだ(開いた)ファイルは画素数が小さいので投稿ガイドラインどおり300ppiに修正する

ツールバー/切り抜き

切り抜き/オプション

左ツールバーにある「切り抜きツール」をクリックすると対応する「オプション」がメニューバー下に表示される。

切り抜きツールマークの右ドロップダウンから定型サイズ(300ppi)をどれか選択してEnterキー。

定型サイズに揃えた方が後の作業(複数画像を並べる)が楽だが、マニュアルで好きなサイズに切り抜きたい場合はオプション「幅高さ」で「比率」を選択すればサイズを自由に切り抜ける。その場合でもカンバス内でWHを定型にしておくことをお勧めする。

作業しやすいように「画面サイズに合わせる」

ズームイン(ツールバーの虫メガネアイコン)でも出来る

2. 「.TIF形式」(編集可能/editable)で「別名保存」、ファイル名を「Figure1,2,….(画像内に入れない場合)」

投稿ガイドラインどおり編集可能/Editableな「.TIF形式」で保存。

この時ファイル名をわかりやすくFigure名(Figure1,2,3,…)にする。

「ファイルサイズが大きくなります」とメッセージが出ますが(実際にジャーナル投稿するときは圧縮して送るので気にせず)そのままOKで確定。

Editableファイル(サイズが大きい)である必要が無い時は「ファイル/書き出し」で他の拡張子で保存しましょう。サイズが小さくなります。

3. 画像サブ番号(a,b,….)を「文字挿入」

ツールバー/文字挿入

複数の画像を合成して一枚のフィギュアにする場合、予め各画像に「a,b,c,..」の文字を入れる。

原稿テキストで画像について述べる際、査読でコメントする際に「特定の画像番号」が無いと困ります。手を抜かずやりましょう。

丁寧な仕事の積み重ねがスタディの信頼性や妥当性に大きな影響を与えます。

ツールバー/オプション

フォント(Arial)、太字(Bold)、色(Black)を推奨(ガイドラインに指定がない限り)

キャンバスをクリックすると黒い■が現れる

文字を打ち込む

打ち込んだ文字をくるくるするとカーソルが変わるので、掴んで位置を調整

範囲指定してフォントの大きさを調整

大丈夫ならオプションバーの〇をクリックor Enterキー

やり直したいときは、オプションバーの「X」か「戻る矢印」、レイヤー内の該当レイヤーを掴んで右下ごみ箱に捨ててやり直しで。

4. 埋め込みPng画像「赤矢印」を挿入、大きさ/向き/角度を整える

メニューバー/埋め込みを配置

フォルダー内に用意した矢印png画像(予めフリー素材をダウンロードしておく)を選択すると取り込まれます。

このままでは大きすぎるので画像外角の白い四角にカーソルを合わせると現れる⇔を掴んで大きさを調整します。

今度は画像外角にカーソルを合わせると現れる「角度調整の半円矢印」をクリックしながら角度を変えます。

やり直したいときは、画像角に白い四角が出ている状態(未確定)なら自由に動かせる。

画像を掴んで位置の調整をし、大丈夫ならEnterキー。

文字入力を確定する時はオプションの〇Xかやり直し矢印。確定した後に修正したい場合は、文字入力レイヤーをゴミ箱に捨ててやり直した方が早い。別のレイヤーをクリックしても確定します。

5. 背景黒or透明画像を新規作成

「一枚の画像(Figure)=一つのファイル(file)=ファイル名(file name)」が一番簡単ですが、複数枚の画像を同一カンバスに並べるテクニックの一つです。

ファイル/新規ドキュメント作成

300ppiで透明ファイル(黒でも可)を作成します。

6. キャンバス上にフレームツールを使って複数画像を並べて揃える、枠線の太さを変える

ツールバー/フレームツール

キャンバス上で左上から右下にドラッグしながら二つのフレームを描きます。

新規のレイヤーが作成されたのを確認してください。

7. ドラッグドロップで事前に用意した(1~4で作成した)画像(300ppi/tif形式)をフレームに投げ入れる

Photoshopの「ウィンドウを(右上角のXの左の四角(縮小)をクリックして、デスクトップ上、或いはエクスプローラーのフォルダに準備したファイルを「ドラッグドロップ」で作成したフレームの中に落とします。ファイルを開いたままだと出来ません。

フレームツールを用いてレイヤーを作成すると、ウィンドウ内のレイヤー左に箱が二つ現れます。確認してください。

8. フレームの縦横・線、中の画像の縦横・位置を微調整

「レイヤー」をクリックして選択し、「左箱」の「フレーム」をクリック。

カンバス内に「フレームの枠」が現れる。

「縦横WH」を「プロパティ」に直接入力

「(枠)線」を直接入力(1→10程度に)

フレームの位置調整は、フレームの枠が現れている状態で、クリックでフレームを掴んで(この時ピンクのガイド線が出る)調節する。

今度は「右箱」の「中の画像」をクリックし、同じように縦横(直接入力)、(クリックで掴んでフレーム内の見え方を)位置調節する。

色々試して調整しましょう。

綺麗に仕上げるコツは、「フレーム」=「中の画像」と、ドラッグドロップで取り込む前に、予めサイズを揃えておくこと。

左のフレーム=右のフレームも「プロパティに直接入力」でピタリとサイズを揃えると奇麗に仕上がります

9. 白黒レイヤーを作成、「カラー⇔白黒」を使い分ける

規定では一定枚数を超えるとカラー画像は有料になります。予算節約のため画像を「白黒」⇔「カラー」間で最適化しましょう。

レイヤー/新規調整レイヤー/白黒

予め用意された「白黒レイヤー」が作成されました。

最後に「ツールバー/切り抜き」で完成、保存を忘れずに。

その他「図表・画像」提出時の注意事項

ファイル名はわかりやすく

Files should be labeled with appropriate and descriptive file names (e.g., Fig1.tiff, Table3.doc).

原稿テキストとグラフィック/フィギュアは別ファイルで

Upload text and graphics (figures) as separate files.

複数のフィギュアファイルをZIPして送ることも出来る

You can compress multiple figure files into a Zip file and upload that in one step; the system will then unpack the files and prompt you to name each figure.

フィギュアをテキストファイルに挿入しない。テキストや図をPDFで送らない。

Do not import figures into the text document and do not upload your text or figures as a PDF.

フィギュアに添える短い説明文「キャプション(短いタイトル+説明)」が必要だが画像内には入れない。

Ensure that each illustration has a caption. Supply captions separately, not attached to the figure. A caption should comprise a brief title (not on the figure itself) and a description of the illustration. Keep text in the illustrations themselves to a minimum but explain all symbols and abbreviations used.

必ず、投稿するジャーナルサイトから最新情報を入手してご自身の責任に於いて提出してください。本ブログ内容に起因して「投稿を受け付けて貰えなかった」「リジェクトされた」「論文が撤回された」等々、当方は一切の責任を負いません。

まとめ

“One picture is worth a thousand words.”

Sue Hanauer (1968)

ランゲージ・イシューはジャーナル投稿では避けては通れません。日本人には相当ハードルが高いです。だったら日本人の得意分野である「精緻な職人技」で差を見せつけようではありませんか。

くれぐれも不正(これも得意技?!)は行わないように、QUICK WIN程悲しいものはないですから。


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